監護者とは,親権の一部(身上監護権)を有する者と定義されています。簡単にいえば,子どもを引き取り,生活を共にし,身の回りの世話をする人のことです。親権は,身上監護権と財産管理権から構成されていますが,監護者は,身上監護権のうち子どもの養育の権利と義務が認められています。
離婚した夫婦の間や別居中の夫婦の間で,どちらが子どもを監護するかを決めたい場合には,父と母の協議により子の監護者を定めることができます。
例えば,親権者を定めて離婚したとしても,親権者が常に適任者とは限らないので,実質的な子の保護をはかるために,親権者とは別に監護者を定めることがあります。親権者を父親と定め,監護者を母親と定めた場合,子どもは戸籍上父親の戸籍に残りますが,一方で,実際に引き取って子どもの面倒をみるのは母親ということになります。
子どもの監護者を定めるための協議が調わないとき,又は協議ができないときには,家庭裁判所の調停又は審判の手続を利用することができます。
監護者のポイント
①監護者は,身上監護権の子どもの養育の権利と義務がある
②親権者と監護者を分ける場合は,取り決めを書面にして残す
③両親以外の第三者も監護人になれる
④裁判所が親権者と監護者を分けることは少ない
離婚に際し,親権者は離婚届に記載する欄がありますが,監護者はありません。 離婚後のトラブルを避けるため,必ず書面に残すべきです。協議離婚の場合は離婚合意書か公正証書を必ず作成しておきましょう。
監護者は,両親以外の第三者がなることも可能です。 祖父母や両親の兄弟姉妹などの親族や,経済的理由で子どもと生活をできない場合などは,児童福祉施設が監護者となることもあります。
なお,監護者として子どもを養育する場合,親権者から養育費を支払ってもらう権利が発生しますので,それらも念頭に置いておく必要があります。
監護者の決め方
監護者の場合,親権者と異なり離婚と同時に決めなければならないわけではありません。離婚が成立した後も監護者を決めることができます。
父母が協議で決めることができないときは,家庭裁判所に「子の監護者の指定」の調停または審判を申し立てます。 監護者の指定は,子どもの健全な成長を助けるようなものである必要がありますので,調停手続では,申立人が自分への監護者の指定を希望する事情や親権者の意向,今までの養育状況,双方の経済力や家庭環境等の他,子の福祉の観点から,子どもの年齢,性別,性格,就学の有無,生活環境等に関して事情を聴かれたり,必要に応じて資料等を提出するなどして,子どもの意向をも尊重した取決めができるように話合いが進められます。
なお,話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され,裁判官が,一切の事情を考慮して審判をすることになります。家庭裁判所が親権者とは別に監護者を指定する場合,一般的には親権者でない親が監護者に指定されることが多いですが,祖父母や親の兄弟姉妹,児童福祉施設など第三者が指定される場合もあります。
制度を活用して無駄な争いを避けましょう
監護者や監護事項の変更は,親権者の変更と異なり家庭裁判所の許可は必要ありません。父母の協議で決めることができますし,戸籍の届出も必要ありません。
この監護者制度をうまく利用し,徹底的に親権者を争う方法以外の選択肢も検討してみてください。親権者の変更についても同様で,監護者の制度を利用すると円満に解決できる場合があります。