家庭内暴力(DV)について
家庭内暴力(DV,ドメスティックバイオレンス)とは,夫や妻に対して振るわれる暴力(虐待)のことで,単に身体的暴行に限らず,性的な暴力,暴言やストーキング行為など精神的ストレスをかけることも含まれます。
また,婚姻関係にはない恋愛中のカップル間でも,同様の暴力(虐待)が行われることがあります。
家庭内暴力は,家族内という閉ざされた人間関係の中で行われるため,外部からは極めてわかりづらく,犯罪として発覚することも少ないのが実情です。
暴力には以下のような種類があります。
家庭内暴力の種類
『暴力』には大きく分けて以下の5つの類型があります。
このうち,身体的暴力が行われている場合であっても,外見に出ない部分(腹部等)に暴力が行われ,周囲が気付かないケースも多く,また,それ以外の暴力は,第三者が気付くことは困難であり,場合によっては本人も自覚していない場合が多々あります。
ア 身体的暴力
殴る・蹴る・突き飛ばす・押さえつける・熱湯や水をかける・部屋に閉じ込める・タバコの火を押し付ける・唾を吐きかけるなどの一方的な暴力行為です。
イ 精神的暴力
日常的に罵る,無視する,行動を監視する,子どもや身内を殺すなどと脅す,ペットを虐待して見せるなど,相手にストレスとなる行為を繰り返し行うことをいいます。
ウ 性的暴力
相手の気持ちを無視した,性的行為のことです。性交の強要や避妊をさせない行為も含みます。夫婦間であってもこのようなことは許されません。
エ 経済的暴力
生活費を渡さない,買い物の決定権を与えない,仕事をやめさせる,家のお金を持ち出す,お酒やギャンブル,女性に生活費をつぎ込むなどがあります。
オ 社会的隔離
実家や友人から隔離する,電話やメールの発信者や内容を執拗に知りたがる,外出を防止するなど,社会から隔離しようとする行為のことです。なかには自分自身が家庭内暴力を受けていると気がつかないケースもあります。
「もしかしたら」と心当たりがあったら,まずはご相談ください。
なぜ家庭内暴力は起こるのか?
DVには,一定のサイクルがあります。蓄積期,爆発期,安定期の三つの構成期間を循環すると言われています。その循環も徐々に早くなりエスカレートしていくようになります。
以下がDVのサイクルです。
①DVのサイクル1 蓄積期
内面にストレスを蓄積している期間です。相手を自分の思い通りにしたい,支配下におきたいという願望が満たされないことに対してストレスを溜めます。優しかった安定期の後に些細なことで怒るようになったり,神経質になってきたりします。
②DVのサイクル2 爆発期
溜め込んだストレスが限界に達し,突然暴力を振るい始める時期です。暴力の衝動を抑えることができなくなっており非常に危険な状態です。
相手の態度や行動が自分の思い通りにならないストレスを発散しており,暴力を駆使して相手を自分の思い通りに行動するように強要してきます。
そして,これからも自分の思い通りにコントロールしやすいようにと恐怖心や無力感を植えつけようとするのです。
③DVのサイクル3 安定期
暴力を振るうことによりストレスが発散され,比較的精神状態が安定している期間です。ストレスが発散された事により,急にプレゼントを買ってきたり,「もう二度と暴力は振るわないから」などと優しい言葉をかけたりしてきます。そして次の暴力に向かってストレスを溜め込んでいく蓄積期に移行していきます。
このように,蓄積期,爆発期,安定期を繰り返し続けるのです。常に暴力を振るうわけではないのは,このメカニズムからです。そのため,DVであるかどうかに悩む方が多いです。
相手に優しい時期と暴力的な時期があり,DVに該当するのかどうか迷われるときは,専門家に一度ご相談ください。
DV被害者の心理
DV被害を受けている多くの人は,安定期にある相手を本来の「彼(彼女)」だと思っています。そのため,暴力を振るわれている最中は恐怖を感じているものの,「これは本来の彼(彼女)ではない。今が異常なだけであって,本来は優しい人」と思いがちです。
また,暴力を振るわれることへの恐怖や,逃げることの出来ない状態により,「自分が耐えればいい」「どうやっても無理だ」という無力感に囚われ,暴力から解放されることを諦めるようになってしまいます。結果として,我慢して,一人で抱え込んでしまい,負のサイクルに陥ってしまうのです。
一人で悩まずに,まずご相談してください。世の中には一人で解決できないこともあるのです。